どうして昆布を最初から 水につけておかないといけないのだろう?

どうして昆布を最初から
水につけておかないといけないのだろう?

そしてどうして沸騰する前に
昆布を取り出すんだろうか?

乾燥昆布を水に30分間つけて
本当にだしがでるのか
確かめることにします。
【30分後】

昆布の色が変わっている。
見慣れた黒色からみどりっぽく
色あせた感じになっていました。
そしてスプーンですくって飲んでみると・・
だしが出ている!

植物の葉などの細胞を水につけると
浸透圧の関係で水が細胞内に入り込み
膨張しますが

植物の細胞質の外側には
細胞壁と呼ばれるセルロースでできた
固い殻があるので
破裂することはありません。

しかし他の植物に比べ
昆布の細胞や組織には
丈夫なセルロースや
ペクチン質などが少ないらしいのです。

そのため水が浸透して細胞が膨張すると
細胞に割れ目が生じ
すぐに中の成分が出てきてしまう
と考えられます。

これが昆布を水につけると
「すぐに」だしが出てきた理由ですね。

そしてもうひとつ疑問が残っています。

それはなぜ沸騰する前に
取り出すか?
ということです。

昆布から溶け出す成分には
旨味成分のグルタミン酸以外にも
いろいろあるようです。

その中には旨みを壊してしまうような
成分も含まれています。
その例がアルギン酸です。

アルギン酸は
昆布を似たときに出るあの
「ぬるっ」としたやつですね。

加熱しすぎると
グルタミン酸に加え
このアルギン酸も出てきてしまうのです。

確かに水に30分つけた後
昆布に触ってみましたが
あのぬるっとした感じはありませんでした。

ぐつぐつ煮込み湯気がたつようになると
徐々に昆布がぬるぬるに。。

そこでさわってぬるっとした瞬間に
昆布を取り出しました。

ではなぜ先にグルタミン酸が溶け出し
アルギン酸は溶け出してこないのでしょう?

アルギン酸は分子式(C6H8O6)n
で表せるいわゆる「多糖類」ですね。

つまりC6H8O6を単位とする構造が
ずらーっとつながった構造になっています。

そして分子量(分子6.02×10^23個分の質量)は
なんと10000~600000!

とても大きな分子ですね。

このような多糖類は水に溶けにくい
ことが多いのですが
アルギン酸も例外ではありません。

水に溶けにくい大きな分子は細胞が
少し壊れたくらいでは
外に出てきませんが
熱を加え完全に細胞が壊れてしまうと
外に出てくるということなのでしょう。

一方グルタミン酸はアミノ酸のひとつで
水に可溶性のある小さな分子です。
そのため水に入れ
細胞が少し壊れても
外に出てくることができます。

まとめると

1. 水に入れると
 弱い細胞壁がすこしずつ壊れていく。

2. このとき旨味成分である
 水に可溶な小さな分子のグルタミン酸は
 細胞外に出てくる。

3. 熱を加え
 細胞が完全に壊れていくと粘性がある水に
 不溶な大きな分子のアルギン酸が
 細胞外に出てきてしまうので
 沸騰する前に昆布をお湯から取り出す。
 

料理も奥が深く「科学」ですね!
 

参考にさせていただきました
wikipedia:アルギン酸
Wikipedia:グルタミン酸